研究成果「麹米の成分が芋焼酎の発酵および酒質に与える影響」

  • 投稿日:2022年04月26日
  • 最終更新日時 : 2022年04月26日
  • カテゴリー: 成果紹介

1 はじめに

酒造りにおける重要な工程を表すことばとして『一麹,二もと,三造り』があるように,「米麹づくり」は重要な工程です。清酒業界では酒造好適米の選抜と評価を長年行っており,多数のブランド米が存在しますが,焼酎麹用米についての研究事例はありませんでした。そのような中,県農業開発総合センターは,普通期栽培用の高アミロース,多収,脱粒性難,短粒を目標に,焼酎麹用として水稲新品種「たからまさり」を育成しました。そこで,当センターでは,「たからまさり」の醸造特性を評価するとともに,米の物性や成分組成が,芋焼酎の発酵および酒質に与える影響について調べました。

2 実験方法

(1)アミロース含有率が焼酎醸造へ与える影響

「たからまさり」などアミロース含有率の高い品種は,蒸米がべた付くことなく製麹操作性に優れていました(図1)。米一粒一粒に麹菌が生育できることから,酵素活性の高い良質の米麹が得られました。また,蒸米水分が過剰となってもべた付かないため,製麹時に水分を過剰に加えてしまっても失敗とならず,安心して製麹作業ができました。

(2)タンパク質含有率が焼酎醸造へ与える影響

施肥量を変えることで米のタンパク質含有率を変化させたところ,タンパク質含有率の高い米を用いて製麹するほど,酵素活性が高い麹が得られました(図2)。また,施肥量に応じて芋焼酎の香味成分量は変化し,香味にも影響を与えることが明らかとなりました(図3)。

3 おわりに

高アミロース米である「たからまさり」は,蒸米がべた付かず製麹操作性に優れた品種であることが明らかとなりました。また,米のタンパク質含有率が芋焼酎の香味成分量に影響を与えることが明らかになったことから,焼酎メーカーが香りの高い商品設計を行う際には,従来から行われている酵母の選択やもろみの温度管理による風味の改良に加え,米の品質(栽培条件)からもアプローチ可能になりました。 なお,本研究は農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(地域戦略プロジェクト)」の委託研究として実施しました。

(食品・化学部)