研究成果「在来軸組工法用耐力壁へのCLTの応用」

  • 投稿日:2022年05月26日
  • 最終更新日時 : 2022年05月26日
  • カテゴリー: 成果紹介

1 はじめに

 CLT(直交集成板)は,挽き板(ラミナ)を幅方向に並べた層を繊維方向が直交するように積層した木質材料であり,寸法安定性が高く,高耐力・高剛性かつ多機能性を持つ部材です。
 主に中・大規模建築への利用が考えられているCLTですが,その特徴である高耐力・高剛性は中・大規模建築だけでなく一般住宅においても大きな効果を発揮すると考えられます。本県では,年間6~7千戸の木造の新設着工があり,木造軸組工法はその8割以上を占めています。本研究では,CLTの利用拡大に向けて,木造軸組工法に使用する耐力壁面材にCLTを利用することで,従来に比べて高性能の耐力壁(壁倍率5倍相当)を開発することを目的として,柱への取付方法について検討を行いました。

2 実験方法

(1) 簡易試験体面内せん断試験

 試験体は,柱材に3層3プライCLT(厚さ36mm×幅500mm×高さ1,000mm)を接合して作製しました。試験は,図1に示すように,柱材の下端部を固定治具に1本のボルトで取り付け,回転自由な形で固定しました。柱材上端部には,油圧ジャッキにつながれた加力治具を取り付けて,ジャッキの伸縮によって水平方向に押し引きを繰り返しました。この結果から,面材張り大壁の詳細計算法((公財)日本住宅・木材技術センター『木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)①』)を参考に,実際の耐力壁を作製した場合の壁倍率を推測しました。

(2) 実大耐力壁による検証

 (1)で得られた結果をもとに決定した仕様で,想定した壁倍率が得られるかを検証するため,実大壁試験体による面内せん断試験を行いました。図2に示すように幅1m×高さ3mの軸組を作製し,これに3層3プライCLT(厚さ36mm×幅1,000mm×高さ3,000mm,高さ方向強軸)をCN90釘の120mm間隔で留め,耐力壁を作製しました。試験は国土交通大臣認定の業務方法書に定められる方法で実施し,その結果から壁倍率を算定しました。

3 実験結果

2(1)の簡易試験により,各仕様で耐力壁を作製した際の壁倍率を推定できました。
 実際に2(2)の実大耐力壁で行った試験結果から算定した壁倍率は5.6倍となりました。

4 おわりに

CLTの強軸を高さ方向にし,CN90を用いて120mm間隔で留めることで,本研究で目標とする壁倍率5倍が達成できるとともに,簡易試験体による予測結果と概ね一致していることが確認されました。

(地域資源部)